歌ってみたミックスをスタートして早5~6年・・・様々なボーカルさんのミックスをお手伝いさせて頂きました。
昨今ではレコーディング機材の進化や情報普及のおかげで宅録なのにめちゃくちゃクオリティの高い歌唱データを頂く機会も増えてきました。
しかし「音は最高…でももっとこう歌えばいい感じにMIXできるのに・・・!ぐぬぬ」と感じる機会は今も尚よくあります。
編集するのは簡単ですが、やはりミキサーが弄るよりも録り段階で良質なクオリティで収録して頂きたい!
ミキサー(ミックス師)視点で感じる歌唱に関して焦点を当てつつ、皆さんのお役に立てたらいいと思います。
Contents
メロのアクセントはしっかり(特にサビ)
歌に抑揚が無いとずっと一定で喜怒哀楽が無い、全体的に薄っぺらな仕上がりになります。特にサビなどキメ部分のメロ頭が弱いと盛り上がりに欠けてしまうので注意が必要です。
夏代孝明さんのニアという曲のアクセントがとても分かりやすかったので参考にしてみます。
サビの強めに歌ってる箇所に注意して聴いてみて下さい。
こころないきみに といかけたのは
きみのてが ぼくよりも あたたかかったからさ
強めにアクセントが付いてる部分は赤い文字で記載してみました。
歌を脳内再生でも結構ですのでイメージしてみて下さい。
拍頭の入り部分に付いてるのがわかると思います。
ここを強めるか強めないかでサビが潜在的にも引き立つのがわかります。
次に紫色に記載してる箇所について考察します。
- といかけたのは・・・サビ後半への助走的についたアクセントだと考えましょう。『け』を強める事により次のアクセント部分『は』へ自然に移行しています。
- あたたかかったからさ・・・サビラスト部分の『か』こちらはリズムが前拍の裏から入ってる(シンコペーション)部分を強調してる箇所です。よく聞くとドラムも同じリズムになってると思います。統一感が強調されてよりまとまって聴こえますね。
ブレス(休符)の箇所はちゃんと決めよう
『ブレスはただ息を吸う箇所』という考え方は間違っていないのですが、曲全体から観た時にブレスは“歌の休符”歌の一部として捉えていいと僕は考えています。先ほど説明したアクセントに近いですね。
もちろん入れ過ぎたらせっかくのメロディが台無しになったり、入れなさ過ぎたら息が続かずただ苦しそうな歌になってしまいます。
更にブレスはどこに置くかによって曲のグルーブ感が変わってきますので、しっかり原曲はどこでブレスしているのか、メモに取りながら練習することをオススメします。
ハイテンポ&音符が詰まってるフレーズは分けて録ろう
近年、ボカロブームあたりから明らかに歌謡曲のメロディの細かさ(音符の多さ)が際立っていると感じます。
「ブレスはどこにあるの???」「早口すぎて難しいだろうな・・・」と感じる曲もよく耳にしますが、こういう楽曲の場合は数テイクに分けて録ってしまっても問題ないと個人的に考えています。
僕が最近聴いた中で難易度『鬼』曲「夜に駆ける」です。
ハイテンポ、音符の多さ、ブレスの短さ、セクションの移り変わりの速さなどなど…
1テイクで録るのは至難の業です。無理はせず2トラック用意して自分が歌える箇所ごとに収録しましょう。数テイク収録してみてミキサーさんに選んで頂くのもいいと思います。
ハモリを録るなら「なんとなく」はNG
ハモリをせっかく歌って貰ったのに申し訳ない気持ちになるけど、メインメロは気合い入ってるのにハモリはただ音程を追うのに必死で弱々しくなっているパターンの方が多いかも知れません。
ミックスをする際にある程度リズムや音程は直しますが、どうしてもメインからかけ離れたニュアンスになりオケに混ぜても浮いた感じに仕上がってしまいます。
是非一度歌ったメインを聴いてみてニュアンス確認してみましょう。
曲の特性を知ろう(まとめ)
楽曲の歌詞に秘められた感情や、ニュアンスなど細かく聞き込むことは本当に勉強になりますし、今の時代Youtubeで検索すれば様々なボーカリストさんが歌ってみたカバーなどを投稿しているので研究するのは容易いかも知れません。
レコーディング前に歌詞にブレス、アクセント、どのくらい伸ばすのか、などなど細かく書き込んでみると格段に歌いやすいと思います。
長くなってしまいましたが、もう一段だけステップアップし皆さんがいい作品をつくれることを願っております!ありがとうございました。